Toyの日記

描いている落書きや覚え書きを書き留めています

ブルーライトニング 第30章

 会議室にはスコット司令、西郷中将、上原博士、そしてプレストシティ警察テロ対策部の藤波警部が顔をそろえていた。

「警察内部の揉め事をここに持ち込むのは心苦しいのですが」と藤波が切り出す。「警備部長が『大統領警護は警備部が主導すべきだ』と言い出しまして。しかも大統領ご本人が、家族を含めた警護をソレイユに要請している。ソレイユは海軍所属のロボットです。正直、テロ対策部だけでは手に余ります。海軍に協力をお願いしたく、参りました」
 海軍と警察は対テロではしばしば共同で動く。藤波はその連絡役のひとりだ。話を聞き終えると、スコットが西郷に向く。
「このタイミングでその動き、警備部が何か企んでいる、と見るべきだな。西郷、どうだ?」
「同意します。警備部は議会の小泉議員の影響下にあります。大統領暗殺計画に関与している可能性は高い。そんな連中に警護は任せられません」
 藤波の表情が険しくなる。「暗殺計画が、あるのですか?」
「情報局のレポートでは“十分あり得る”ですね。首謀は小泉議員。もっとも現実的なシナリオは、議会主催の大統領講演会での狙撃です。会場準備を議会側が握るため、内通者がいれば手引きは容易です」
「あの小泉か」とスコットが唇をすぼめる。

 小泉議員はかつてプレスト市長。牧原市長の台頭で主導権を失ったとはいえ、防衛軍と警察には今も影響力がある。西郷は感情を見せず、淡々と続けた。
「彼にとっては、海軍と“自分の息がかかっていない”テロ対策部を一気に潰せる好機です。こちらはあえて策に乗り、万全の体制で潰しましょう。大統領のご下命どおりソレイユを出すにしても、リヨン大統領とご家族に危機が迫っている今、ソレイユ単独では力不足です。そうですよね、上原博士?」
 軍の嘱託として同席していた上原がうなずく。「マルスを投入すべきでしょう」
マルス? 海軍の新型ロボットですか」と藤波。
「ええ。見た目に惑わされますが、戦力としては頼れます」と西郷。
 スコットが念を押す。「ただ、衆目にさらして問題は?」
「外見を変えましょう。女の子の姿に。大統領にはご夫人とお嬢さんが同行されます。自然に行動できるでしょう」
「なるほど、いい」と場の空気がまとまる。
「大統領がどうしてもソレイユをと言われるなら、ソレイユとマルスをペアで」と上原。
「うむ、それでいこう」スコットはうなずき、
「サム、ライトニング・ファントムとソレイユを大統領警護に回せるか?」
 
 サムが即答する。「ファントムは予備兵力運用ですから可能です。ただ、西郷司令、本当に大統領護衛に振り切ってよろしいですか?」
「差し支えない。今この瞬間、最優先の“作戦”は大統領護衛だ」
「わかりました。ライトニングを投入します」

 藤波が首をかしげる。「ライトニング・ファントムとは?」
 上原が補う。「海軍で最も強力なロボット部隊です。マルスと直結でデータリンクを組めるので、要人警護の効率も段違いです」
「それは心強い」
 スコットが実務に落とし込む。「投入可能なのは人型だけか?」
「屋内は人型に加えて球型ロボット『ボール』が使えます。小型多数で警戒と対人制圧に有効です。上空・水上はホーネット、トルネード、クラブマンなどの特務機がカバーします。ライトニングは多目的に展開できます」とサムは答えた。
「よし。ライトニングだけで基礎警備は担えるな」スコットが確認し、西郷に視線を送る。
「ええ。現状、敵の戦力はシティ本体を直接叩ける段階にありません。やれるのは小規模テロ、たとえば“大統領暗殺”です」
 その一言に、室内の空気が凍った。
「暗殺が“小規模”か?」とスコット。
「少数の手駒で実行可能、という意味です」
 藤波が割って入る。「失礼。しかしあなたは敵の腹の内を知っているように話す。信用していい情報ですか?」
 西郷の口端にかすかな笑みが浮かぶ。「情報局のレポートは精度が高い。暗殺は以前からのプランだが、連邦首都よりも“外遊先”が狙い目、そう読んでいます」

「では、なぜ彼らは大統領を狙う?」
「リヨン大統領は改革派。軍需市場をほぼ独占してきたガバメント社の利権を崩し始めた。十分な動機です」
「敵はガバメント社、という理解で?」
「その通り。まだ完全に追い詰める態勢は整っていませんがね」